TOPICS

歯周病について

バイオフィルムって何?

ここ10年くらいの間で、バイオフィルムという言葉がさまざまなメディアで取り上げられ話題になっています。

”バイオフィルムが水道管を詰まらせる” あるいは ”船底を傷つけて珊瑚礁を破壊する” とか、さらには、”ヒトの耳、肺、尿道などに感染し、動脈を詰らせる” そして、”バイオフィルムは歯と歯肉の間にも形成される”と報道されています。

まるで、さまざまな場所に生息する新種の恐ろしい生き物のようです。

細菌は、仲間と集まることを好むことが知られていますが、数が増えるにつれ、ヌルヌルした膜状に広がっていきます。

その排泄物は金属の表面の化学組成を変え、腐食を加速し、ステンレススチールに穴をあけることさえあるそうです。

ヒトの体においては、細菌の排泄物が免疫応答を惹起し、炎症反応を起こすことがあります。

<バイオフィルムの形成>

バイオフィルム形成の最初の段階は、浮遊菌が表面に付着することです。

そして、堆積、増殖して小さな集落をつくります。さらに浮遊している他の細菌をこの仲間に組み入れ、バイオフィルムが成長して大きくなると、他の細菌がそこに引き寄せられて付着し、集落はいっそう栄えます。

バイオフィルムのヌルヌル、ベトベトした糊状の物質の本態は菌体外に合成する多糖体です。

この多糖体がバイオフィルムを集落として結合させ、そこに棲息する細菌を保護しています。

そして、細菌は菌種を超えて互いにコミュニケーションをとることができ、シグナルをだして大きな集団になり、頑固に住み着く生態系を築いています。

<バイオフィルムの有害性>

バイオフィルムは栄養源を取り入れ、自分たちの環境を破壊するような老廃物を排出し、持続的に感染します。

浮遊菌であれば、抗菌薬や抗生物質が効いても、バイオフィルムになってしまうとバリアを形成し、入り込めないため効かないだけでなく、抗菌薬によって逆に代謝活性を高めてしまうともいわれています。

バイオフィルム表層の菌は、消毒薬に感受性を示しますが、多糖体には浸透できないため、中心部の細菌を攻撃することはほとんどできません。

もちろん、白血球も入り込めないため、免疫応答も期待できません。

<口腔内バイオフィルム細菌と全身疾患>

歯周病や歯の根の先にできる病巣のバイオフィルム形成細菌は、内毒素をもち血流に入り込みます。

さらに、ストレスを受けると生き延びるために対応したタンパク質をつくり、炎症性物質を誘導して、免疫系を撹乱します。

口腔内バイオフィルム細菌は、遠隔の臓器で免疫複合体を蓄積し、アレルギーなどによる糸球体腎炎、皮膚疾患などの病巣感染の原因になります。

さらに、直接/間接的に掌蹠膿疱症、骨粗鬆症、糖尿病、肥満、妊娠トラブルなどに関わることが分かってきました。

また、口腔内バイオフィルム細菌は、頻繁に血流に入り込んで菌血症、敗血症、細菌性心内膜炎、動脈硬化などに関わることも証明されてきました。

腹部の動脈瘤部位や心臓の血管内壁に歯周病の細菌がみつかることで、歯周ポケットが深くなると、細菌が歯肉の上皮を貫通して血液中に入り込んでいることが分かってきています。

高齢者に多い誤嚥性肺炎は、入れ歯についている細菌や歯周ポケット内、舌、のどなどの粘膜に持続感染しているバイオフィルム細菌が唾液に混ざって、誤嚥され気管に入ることが原因となっています。

口腔、咽頭粘膜にあるウイルスレセプターが口腔内の細菌などの酵素によって露出すると考えられているため、口腔内の細菌性酵素活性を減らすことによって、インフルエンザウイルスを含む呼吸器感染性ウイルスの吸着を防ぐことができるといわれています。

<バイオフィフムの除去>

前にも述べたように、現時点ではバイオフィルムがバリアとなり、抗生剤が細菌に到達しないこと、さらにバイオフィルムの中を流れる液体が抗生剤を希釈分解するメカニズムを持っていることが分かっています。

ということは、機械的に細菌集落を取り除くことが重要なってきます。

歯周病においては、従来から行われている、スケーリング(歯石除去)などの方法がそれにあたります。

したがって、バイオフィルムを物理的に取り除く毎日のプラークコントロールのテクニックをしっかり習得することが必要です。

そして定期的に定期検診をしてプロフェッショナルケアを受けることが大事になってきます。

この点において、歯科衛生士の役割と責任は大きなものであり、、メインテナンスを含め治療を成功させるためにはきわめて重要な要素です。

ページトップへ
Translate »