症状別 顎関節症 ”口が開かない!”
口が開かない!
大きく口を開けた時、揃えた指が縦に楽に3本入れば、口は十分開いています。
それ以下で、患者さん自身が日常生活に不自由を感じていたり、痛みを感じていたりする場合は、開口障害と言い、顎関節症の主な症状の一つです。
また、口を開ける時、まっすぐに開かずにまがってしまったり、無理すれば開くけれどひっかかるような感じがすることもあります。
原因として、顎関節に原因がある場合と筋肉に原因がある場合があります。
多く場合、それまでの症状の経過や診査で臨床診断をすることができますが、関節円板の変形や骨の形態変化などの精査には、MRI検査や顎関節造影検査などを行うことがあります。
A. 以前にあごに“カクッ””コキン”という音がしていたが、急に音がしなくなり口が開かなくなった。
これは、関節円板が前にずれて、あごにひっかかって動かなくなる状態です。(このような状態を”鍵がかかった”という意味で、ロックと言います)
この場合、いつ口が開かなくなったか?ということが治療に大きく関わってきます。
① 口が開かなくなって、すぐの場合
口が開かなくなって1週間くらいの場合、局所麻酔をして痛みを取り除いた後、関節腔を生理食塩水で膨らませながら徒手にて(パンピングマニピュレーション)により、開口させる方法です。
この方法で口が開くようになった場合は、再び開閉口時にあごに音がなるようになります。
② 口が開かなくなって、しばらく経っている場合
口が開かなくなって、しばらく経っている場合は、上記の方法では開かないことがあります。
この場合、関節円板が前にずれたままで、関節の骨の正常な運動を回復させることを目的に運動療法(下顎頭可動化訓練)を行います。
これは、あごを左右に動かしたり、ゆっくりとあごの筋肉の力で口を開けたりする訓練です。
また、ご自身の親指と中指を使って、上下前歯を指の腹で押し広げる運動も行います。
この訓練は、軽い痛みや音がする場合がありますが、1日5~10分程度で良いので、毎日行う必要があります。
また、必ず歯科医師の指導のもとで行います。
③ それでも開かない場合
①・②を行っても、開口できなかったり、痛みが軽減しない場合には、関節腔の中を20分~60分くらいかけて、ゆっくりと洗浄する方法(関節腔洗浄療法)があります。
この方法は、痛みの除去や関節の動きを悪くする繊維の癒着を取り除く効果が高いと言われています。
①や③の処置の後には、次のような症状がでることがあります。
*関節の中で”クチュクチュ”音がしますが(薬液を注入するため)、数時間で改善します。
*注射した側の歯がかみ合わせにくくなりますが、1日~1週間で元に戻ります。
*数日間顎関節に痛みがでることがありますので、感染予防のための抗生剤と消炎鎮痛剤を処方いたします。
また術後のリハビリがとても重要になりますので、歯科医師の指示に従ってください。
B. その他
① あごのけがや炎症を起こしたことがある。
* あごの周囲にけがをしたり、あごの骨折をしたりしたことがある場合
* あごの周囲の組織に炎症(腫れや痛み)を起こしたことがある場合
* あごの周囲の手術をしたことがある場合
口が開きづらくなることがあります。
この場合、周囲の組織が硬くなってしまって動かしづらくなるので、口を開ける練習(開口練習)をすることで、徐々に開口できるようになってきます。
開口練習には多少、痛みが伴います。
開口練習に全く反応しない場合や、痛みが強い場合には、けがや骨折の影響で、顎の骨や周囲の組織が固まってしまったりしている場合があります。
このような場合には、外科的な処置が必要になることがあります。
痛みがあってもなくても、急に口が開かなくなったり、徐々に口が開かなくなってきている場合には、専門医を受診し、精査することが必要です。
このように、段階によっていろいろな処置方法がありますが、いずれの場合も、それぞれの患者さんの症状や経過によって、精査をしながら治療方針を決めていきます。