今、歯科医療従事者、歯科医院としてできること
新型コロナウィルス感染予防のために私たちができること
新型コロナウィルス感染症が猛威をふるい、3月になってから世界中が今まで経験したことのない状況となっています。
医療崩壊寸前の声が聞こえる中、私たち歯科医師、歯科医療従事者、歯科医院ができることは何か。
お口の中の環境が全身の健康にとても大きく関係していることは多くの方がご存じのことだと思います。
そして口腔内細菌は虫歯や歯周病だけでなく、心臓病、糖尿病、肺炎などに関係しています。
また、腸内細菌へも影響していることがわかっています。腸は体内の約7割の免疫細胞が集められている重要な免疫組織です。
歯周病を悪化させるジンジバリス菌が多いほど体内のビタミンCが少ないという報告があり、歯周病がビタミンCを消費してしまいます。
ビタミンCはウィルス性の呼吸器感染症に有効であることがわかっているため、歯周病があるとそのウィルス性呼吸器感染症にかかるリスクが上がってしまいます。
また、ビタミンDや亜鉛も歯周病が進行している人ほど不足していることが報告されています。
ビタミンDは骨を調節することに関わっていますが、粘膜細胞を固く結びつけるタンパク質や抗菌タンパク質の合成にも関わっており、細菌やウィルスの感染予防に重要な栄養素です。
ウィルスが付着する上気道粘膜は粘液(ムチン)でしっかり覆われていることが大切で、この粘液によって付着したウィルスを排出し、体内に入らないようにします。
また、この粘液には免疫グロブリンが分泌されますが、その合成にはグルタミンやビタミンAが必須です。
亜鉛はこのビタミンAの働きを維持するためにも必要です。またウィルスが体内に侵入してしまった時、その増殖を亜鉛が抑制します。
亜鉛は不足すると味覚障害を起こすことで有名です。新型コロナウィルスに感染し、体内での増殖を抑制するために亜鉛が消費され味覚障害が起こるのではないかと考えます。
さらに歯周病菌が分泌するプロテアーゼという酵素は口腔や呼吸器粘膜のタンパク質を分解し、防御機構を低下させるためウィルス感染しやすくなってしまいます。
新型コロナウィルス感染症は循環器、呼吸器疾患や糖尿病などの基礎疾患がある患者さんが重症化しやすいと言われています。
これらの疾患はまさしく歯周病と関連する疾患です。
毎日、テレビやネットは新型コロナウィルスのニュースであふれており、不安が募がるばかりです。
外出制限、経済的不安、感染への恐怖、予測のたたない状況に心身ともにストレス状態にあります。
歯科的には舌痛症や顎関節症、味覚障害、特発性の歯痛、咬合違和感症候群などは不安があると発症しやすいと言われています。
ストレス下では免疫が低下します。ストレスによってビタミンCはさらに消費されるので感染症も悪化しやすくなります。
このような厳しい状況で、健康を守るために、私たち歯科医療従事者は次のような対策を提案します。
1. お口の中の歯周病菌を減らしましょう
歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどの自分で行う口腔ケア(セルフケア)に今までより
少し時間をかけましょう。
何より気持ちいいですし、歯周病を治すことでウィルス感染のリスクを減らすことが
できるのです。
歯周病を進行させ、肺の機能を低下させる喫煙もできればこの機会に考えてみませんか。
2. 鼻呼吸をしましょう
粘膜を乾燥させず、しっかり粘液で覆っておくことで、付着したウィルスは排出され
感染しにくくなります。
「あ・い・う・べ」体操を行うことも有効です。
3. しっかり栄養をとりましょう
身体をつくるタンパク質をはじめとして、ビタミン、ミネラルなどを適切に摂取し、
ウィルスに負けない身体を作りましょう。
腸内環境を整えることも大切です。
4. ストレスを解放しましょう
軽い運動やストレッチを行うことで、血行がよくなり、筋肉、関節、心肺機能の維持
に有効です。天気のよい日などは人の少ない早朝などにウォーキングしリフレッシュ
しましょう。太陽を浴びることで体内でビタミンDを合成することができます。
テレビのニュースなどは見過ぎると不安をあおることになりますので、1日1〜2回に
とどめ、自分の楽しいと思うことをしましょう。
5. 口角を上げて笑顔を作りましょう
眉間にしわを寄せてしかめ面は、顔の筋肉に負担がかかり、頭痛の原因にもなります。
口角を上げて笑顔になることで、筋肉が少し緩みます。
笑顔はまわりに伝染し、まわりのストレスも癒やします。
心から思い切り笑えば、免疫力も上がります。
現在、新型コロナウィルスの感染は拡大しており、多くの方が制限下での生活を強いられています。
一方、医療崩壊の瀬戸際で、この目に見えない敵と最前線で戦い、治療に従事されている医療従事者の方々に最大の敬意を表します。
私たち歯科医療従事者は医療の一端として、口腔内に健康を守ることで感染予防の下支えをしっかり行っていきます。
感染が終息し、また当たり前の日常生活が送れるよう、みんなで協力し乗り越えていきましょう!