タバコとオーラルヘルスケア (2)
喫煙と歯科疾患
人体のなかでも、口腔はタバコの煙が最初に通過する部位です。
喫煙が以下のような疾患に関わっているといわれています。
① 口腔がん、白板症、歯周病の発症や進行。
② 抜歯後や手術後の傷の治癒を遅らせる。
③ インプラントの予後が悪くなる。
④ 口臭、唾液の異常、メラニン色素沈着。
喫煙と口腔がん
口腔がんの死者は、年間約5000人であり、全体のがんの死亡のうち2%弱であるため、一般の関心は低いのですが、がん摘出後に最先端の再建を行っても、会話、嚥下など人間の文化、生存に必須の機能が著しく損なわれてしまいます。
口腔がんはIRAC(WHOのがんの研究機関)で”十分な証拠により喫煙との因果関係が立証されている疾患”と認定されています。
また、喫煙による口腔がんリスクは、7.44倍に増大します。
喫煙と歯周病
通常ニコチンは肺から吸収され、血液を介して全身に及びますが、消化器系粘膜や皮膚からも体内に入ります。
ニコチンは肝臓で代謝されコチニンとなり、腎臓から尿中に排泄されます。
コチニンも有害物質であり、喫煙後にニコチンとコチニンは、血液を介してポケット内の浸出液に、また前者は直接唾液中に溶解し、歯周組織に影響を及ぼします。
喫煙者の歯周病の特徴
① 歯肉辺縁部が、硬く、ロール状に肥厚している。
② 歯周病の進行度と比較して、歯肉の発赤や腫れが軽度
→ 正常な免疫反応が抑制されるため
③ 同年代の非喫煙者と比較して、重度で広範囲にわたる。
④ 上下顎前歯部、上顎口蓋部が他部位と比較して歯周ポケットが深い。
⑤ 上下顎前歯部の歯肉がさがっている。
⑥ プラーク、歯石の量と病態が不一致。
⑦ 20~30代での早期に歯周病が発現する。
⑧ 急速に進行する。
⑨ スケーリング(歯石除去)後のポケットの改善が遅い。
⑩ 歯周外科手術後の1年以内のポケットの改善が遅い。
⑪ 歯周治療に対する治癒が遅い。
→ 長期的、慢性的に歯肉の血管系に障害を与え、治癒過程における血管の再構築も損なわれるためです。